E1入植地:パレスチナ問題の解決を困難にするくさび

E1地区にある西岸のイスラエル警察本部と彼方に見える大規模入植地マアレ・アドミム(2009年、川上泰徳撮影)

イスラエル軍によるガザ攻撃が来月10月で3年を迎えるいま、イスラエルのネタニヤフ政権はパレスチナ問題の解決を困難にする新たな楔(くさび)をヨルダン川西岸に打とうとしている。東エルサレム近郊の西岸にある「E1入植地」の建設である。1990年代半ばにイスラエルが建設計画を立ててきたが、国際的な反対で建設には着手されなかった。ネタニヤフ政権は住宅建設計画を最終承認し、今年8月には一部の1,234戸について建設業者の入札を開始した。(文・写真 川上泰徳)

「E1入植地」の予定地は、パレスチナ人が住む東エルサレムと、その東約7キロにある大規模入植地マアレ・アドミムとの間に広がる約12平方キロの地域。イスラエル政府はここに住宅3,401戸のほか、道路、商業・雇用地区を建設し、マアレ・アドミムをエルサレム側につなぐ計画を進めている。

イスラエルは2004年、E1地区で道路造成と、西岸を管轄する警察本部の建設に着手した。住宅計画は米国などの反対で凍結されたが、警察本部については治安施設であるとして建設を続け、2008年に業務を開始した。私(川上)は翌2009年、現地を訪れ、E1予定地の無人の荒野に立つ巨大な警察署を確認した。

谷を隔てて北の方角に、マアレ・アドミムの入植地がある。別の角度から見ると、右手にマアレ・アドミムがあり、左手の谷の向こうの無人の丘に警察署が見える。(写真下)この全体がヨルダン川西岸である。実際にE1入植地予定地に入ると、警察署に向かう真新しい引き込み道路が建設され、「POLICE(警察署)」の交通標識がある。

E1入植地の場所(ピースナウの地図を参照)

ここに大規模な住宅地が建設されれば、東エルサレムからマアレ・アドミムに至るイスラエル側の市街地が連続する一方、東エルサレムは西岸のパレスチナ人地域から切り離される。さらに、ラマラなど西岸北部と、ベツレヘム、ヘブロンなど南部を結ぶ回廊が大きく狭められる。さらにパレスチナ側が東エルサレムを首都とし、西岸の南北に連続したパレスチナ国家をつくる可能性を損なうため、E1は二国家解決を困難にする計画とみなされてきた。クリントン、ブッシュ、オバマ各米政権はE1地区での住宅建設に反対し、イスラエル政府に計画を凍結するよう圧力をかけてきた。

E1地区への入植地建設構想は1990年代前半に始まった。1994年にはマアレ・アドミムの開発区域を東エルサレム方向へ広げる計画が示され、1995年には労働党のラビン首相がE1地区の住宅計画の策定を指示したが、建設には着手しなかった。その後も歴代政権は計画を支持し、2002年にはE1全体の基本的な開発計画が承認された。2004年ごろから道路造成などの先行工事が始まり、2008年には警察施設が完成したが、米国や欧州諸国の反対により、住宅建設は凍結されていた。

ネタニヤフ政権は入植地拡大を政策として掲げ、2025年8月20日、同政権の方針を受け、イスラエル国防省傘下の民政局に置かれた高等計画評議会が、E1地区に3,401戸を建設する計画を最終承認した。西岸の入植政策を担当する極右政党「宗教シオニズム」のスモトリッチ財務相は、E1建設によってパレスチナ国家構想を「葬る」と公言した。

ネタニヤフ首相はE1入植地とマアレ・アドミムのインフラ整備に約30億シェケルを投じる協定に署名し、「パレスチナ国家は存在しない」と述べた。2025年12月には3,401戸すべてを対象とする建設入札が公示され、約30年間止まっていた計画は、業者を選ぶ実施段階へ移った。

E1地区に立つ警察書(川上撮影)

今年8月18日、イスラエル住宅省は3,401戸のうち1,234戸について新たな入札を突然開始し、締め切りを総選挙直前の10月19日に設定した。

イスラエルの反入植地団体ピースナウは、選挙前に業者との契約を成立させ、次の政権が計画を中止しにくい状態をつくる狙いだと指摘している。計画をめぐる裁判は続いており、建設業者もまだ決まっていない。しかしE1はもはや将来構想ではなく、住宅、道路、商業地区、さらにE1周辺で暮らすアラブ系ベドウィン共同体の立ち退きを組み合わせて、パレスチナの分断と、西岸の「イスラエル化」を決定的に進める段階に入ったといえよう。

南西の方向から撮影。右手にマアレ・アドミムと、左のE1地区に立つ警察署(川上撮影)

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