教育支援:Education 4 Gaza/ガザに教育を支援キャンペーン

2024年5月、ハンユニス、マワシ地区の避難民キャンプで避難生活を送るガザ住民の方達が主体となり、子どもたちの教育と心のケアを行うためにワタン学校を立ち上げました。2024年5月、ハンユニス、マワシ地区の避難民キャンプで避難生活を送るガザ住民の方達が主体となり、子どもたちの教育と心のケアを行うためにワタン学校を立ち上げました。ワタンとは、祖国という意味です。 現在、4歳〜14歳までの子どもたち約1500人が週3日ずつ通い、アラビア語、算数、理科、英語の基礎科目を学んでいます。戦争で傷ついた子どもたちの心を癒すための心理ケアプログラム、安心して子どもらしい時間を取り戻すためのレクリエーションの時間にも力を入れています。 ワタン学校は、フランスと日本で展開されている「Education 4 Gaza/ガザに教育を」支援キャンペーンによる支援金を中心として運営されています。 


ガザ南部マワシ地区で市民が始めた教育テント 950人の子供たちが学んでいる(写真:Education 4 Gaza/「ガザに教育を」プロジェクト提供)

ガザで市民による子供たちの教育支援プログラム 日本でも支援の動き  川上泰徳

2023年10月以来、イスラエル軍による攻撃が続き、学校が破壊され、公的教育事業が止まっているガザで、市民が中心となって避難テントで子供たちに教育を提供する「ガザに教育を(Education 4 Gaza ) 」というプロジェクトが行われている。日本でも現在、支援のためのクラウドファンディングが始まった。

 プロジェクトに参加しているハンユニス在住の人権活動家アブデルハリム・アブサムラさんとインターネット通信アプリで連絡をとり、話を聞いた。アブサムラさんはガザを代表するパレスチナ人権センター(PCHR)の研修担当部長で、人権調査のリサーチャーの研修教育に当たってきた。

 プロジェクトはガザ南部のハンユニスにある人道地域マワシ地区のテント地帯で2024年5月に、1テントで午前中と午後の1日2交代制で計50人から始まった。その後、徐々に規模が拡大し、現在では10教室で日本の小中学生にあたる1年生から9年生までの950人の子供たちが学んでいる。

 アブサムラ氏は「教育は私たちパレスチナ人にとって、パンや水と同じく貴重なもので生きていくためになくてはならないものである。パレスチナ人は難民になってから教育によって身を立ててきた歴史を持つ。かつては湾岸諸国へ多くの教師や専門書を送り出していた」と語る。

マワシ地区は20キロ四方あるが、もともと農地で社会インフラはなく、イスラエルが「人道地区」に指定してはいるが、水も電気もない。そこに20万人以上の避難民が集まっている。子供たちのほとんどがガザの北部から避難してきた避難民で、教師も同じだ。

 教育プロジェクトの中心となっているのはハンユニスにあるワタン青少年センターと人間開発基金という二つの地元NGOだという。現在、参加している教師は37人で、アラビア語、英語、数学、理科などすべての科目があり、さらに子供たちにレクレーションの機会を与えるプログラムや、子供たちの心理ケアも行われているという。

 ガザでは1月中旬にイスラエルとイスラム組織ハマスの停戦が合意されたが、3月下旬に停戦は破綻し、イスラエルの空爆が始まった。私が連絡を取ったのは現地の夜の時間だったが、話している間もアブサムラさんが「ほら、いま銃撃の音が聞こえる」と語る場面があった。このような困難の中で、教育プロジェクトを行う理由について、アブサラムさんは「子供たちに教育の時間を与えることによって、子供たちを支配している空爆への恐怖や不安を軽減、緩和することができる。子供たちが戦争で抱え込んだトラウマに対応するための精神的なケアも行っている」と語った。

 国連の発表によると、ガザでは2023年10月以来、小中学生にあたる学齢期の子供たち約62万人が教育の機会を奪われ、ガザ全域で400カ所以上ある学校のうち9割が全壊または半壊しているという。建物が残っている小学校は、家を失った人々の避難場所になっていて、公的教育は行われていない。

 アブサムラさんによると、市民による子供への自主的な教育プロジェクトは、ガザのいたるところで行われ、ハマス統治下のガザ教育省も支援しているという。ハンユニスのプロジェクトは規模が大きく組織的だ。国連のユニセフ(UNICEF:国連児童基金)も今年1月から関わり、教師への手当や、教育で使う黒板などの機材、ノートなどの文房具などについて支援している。

 日本で「ガザに教育を」プロジェクトへの寄付を呼びかけているのは、フランス語通訳で写真家の二口愛莉さん。二口さんは、イスラエルによる2008年12月から09年1月にかけてのイスラエルによるガザ攻撃後の状況を扱ったドキュメンタリー映画『ガザ=ストロフ −パレスチナの吟−』(サミール・アブダラ、ケリディン・マブルーク共同監督)の字幕翻訳を行い、2023年12月より、仲間と共に配給団体「Shkran(シュクラン)」を立ち上げて、上映を行ってきた。

 『ガザ=ストロフ 』の中でアブサムラさんは人権活動家として撮影チームの案内役として登場する。「ガザに教育を」プロジェクトが始まった時、アブサラムさんからフランス在住のアブダラ監督に支援の要請が伝わり、監督がフランスのNGOに呼びかけて、多くのNGOが集まって、「ガザに教育を」支援キャンペーンが2024年11月から目標支援額6万ユーロ(960万円)として始まった。フランスでの寄付は4月18日段階で5万4千ユーロに達している。

※フランスの支援サイト

 支援金は「ガザに教育を」プロジェクトの運営に使用され、現地で必要な教師やカウンセラーらの人件費や、教室テントや文房具、ソーラーパネルを使ったインターネット通信費用、さらに心理社会的プログラムの研修や教材費として使われるという。

 二口さんはアブダラ監督を通して、フランスのキャンペーン団体と連絡をとってきた。支援金をガザに送金する問題があり、日本からの支援金もフランスに送られて、プロジェクト実施の4ヵ月分に使用される予定という。

 日本でのクラウドファンディングは3月31日から5月11日までの予定で120万円を目標として始まった。4月18日の段階で95人から計86万円の寄付が来ている。今回の目標を達成すれば第2弾を呼びかけることも検討しているという。

※ガザの子供たちの教育と心理ケアを行う現地プロジェクトの支援サイト

 「 ガザの子どもたちを支援することによって、教育というものがいかに大事で、この困難な中でも、その場を作ることの大切さに私たちが逆に気づかされます。さらにアブダラ監督やアブサムラさんなど信頼できる人が関わっているガザの支援プロジェクトに直接参加できることは素晴らしい機会だと思いました」と、二口さんは語る。寄付者から二口さんの元には「支援できるきっかけをくれてありがとう」という声が届いているともいう。

 アブサムラさんも日本での寄付の取り組みが始まったことを知っていた。「日本はずっとパレスチナに対する人道支援をしてくれた国であり、日本人が教育を重視していることも知られている。日本人が私たちのプロジェクトを支援してくれることはうれしい」と語った。
 (初出:Yahoo ニュース 2025/4/18 https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/315a0f7aa4528ef7174661f710b8dc3de297b5dd

 

Back to top